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新幹線で寝過して気付いたら新大阪

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eternal youth

☆字
文章を書いてみました。本当はマンガにしようかと思ったんだけど視覚的にお年寄りの遊戯さんて見る人がちょっとキツイかなと思って文字に変更。でもやっぱりこれオチ的には絵で見た方が良かったかな。
お年寄りの遊戯さんとおじさんの十代君で十表。






































童実野駅からだいたい徒歩で10分程のマンションにかつてキング・オブ・デュエリストとして名を馳せた武藤遊戯はオーナーとして住んでいる。
一階のテナントには本来ならコンビニやファーストフードショップ、せめて弁当屋でも入ってしかるべきであろうが流石決闘王がオーナーのマンションといったところかカードショップなのが特徴で、デュエルスペースも広くとられた店内は公式非公式問わず大会も定期的に行われ常に楽しげな声にあふれており遊戯はおっとりしたカードと子供好きの店長として慕われながら日々を過ごしていた。
一日が終わると、店終いを済ませたバイトの青年達をご苦労様と見送って最上階の己の住まいに戻るのが日常だが本日は定休日。午前中はぼんやりとベッドで過ごして昼過ぎからのそりと動いて家事を始める。
30、40をとうに過ぎた年齢となってしまったが遊戯は未だ独身だ。基本的に一人での生活が長いので洗濯も掃除も慣れた手つきでこなしていく。
独身ではあるけれど恋人がいないわけでは無い。というか恋人がいるからこそ未だに独身なのだ。

なにせ同性の恋人なので。

外国で結婚しませんか、と未だに恋人は言ってくるのだが若い頃は照れくさくて、現在は了承したい気持ちの方が強いのだけれど断り続けているだけになんだかイエスと答えるタイミングがわからなくなってしまっていてそれが年下の恋人についての目下の悩みである。
数十年来の親友の城之内等には俺がしたがってるって伝えてやろうかなどと野次馬顔を隠さず言われるがいわばプロポーズの承諾である、こればっかりは自分から絶対に答えたいのだと語気を強めて主張してはならさっさと結婚してやれと笑われ続けている。

本日はその恋人が遊戯のところに訪れていた。
遊戯にも詳しい事はわからないが、恋人はとても不思議な力を持っていて若い頃からその力を駆使してKCやI2社等が極秘に抱えている問題や事件を扱ったり、己同様の力を持つ者の手助けをして生活をしている。
それ故世界中を転々とし、居を構える事もせず彼は自由に生きて時折ふらりと思い出したように遊戯に元に来るのだ。
若い頃は流石に色々お盛んで、逢瀬の度に翌日半日はどうしても起きられない事態になったものだけれど流石に今は落ち着いて…というか彼は未だにいける様子であるのが恐ろしいところだが遊戯の方が持たないのでなるべく控えてもらっている。
セックスレスは浮気の原因とか破局のきっかけなどと聞くだけに、答えられる間はせめて答えたいのだがいかんせん体力もだが容姿的にも年齢を重ねたこの姿を相手に晒すのに抵抗があるのだ。…といっても今日は午前中寝て過ごしたわけでつまり昨夜はまあ致したわけなのだが。
別れたくは無いし浮気もされたくないけれど抱くのにこんなに年齢を重ねた自分でいいのかと問うた事もあったが

今の姿を恥ずかしがって辛そうな遊戯さんってとてもキます

と笑顔で嫌な事を言われたので本当は考えない方がいいのかもしれない。

洗濯機が洗濯を終わらせた機械音を響かせたのでそのまま乾燥機に移しスイッチを入れてリビングに戻ると、それまでソファに座っていた恋人の姿が見えなくなっていた。
トイレにでも行ったのだろうとさっきまで二人で選んでいたローテーブル上のカード達をそれぞれの山にまとめ、コーヒーを淹れ直そうと立ち上がる。
新しいパックが出たので店の貸しデッキをどうするか手伝ってもらっていたのだ。

その時、また機械音がリビングに響いた。

部屋中に響く音は洗濯機でもなければ乾燥機でも無く、テーブルの隅に置かれた恋人の携帯が出している。
遊戯は一瞬どうしたものかと考え、一度廊下に続くリビングの扉に目をやるが開かれる気配は無い。
画面にKCと出ているという事はもしかしたらなにか事件があったのかもしれず、せっかく忙しい恋人を独占して甘やかな時間を過ごしていたというのに正直に言ってとても無粋な電話だと思うがだからといって放って置くわけにもいかない。
溜息をついてとりあえず出ようとしたところで室内だというのに強風が吹いて遊戯はソファに飛ばされた。
正確には戻ってきた恋人が常人ならざるスピードで遊戯がとろうとした携帯を取り上げ、その勢いに負けてソファに座り込んだのだ。
きょとんとした顔で座り込んだまま見上げる遊戯を前に恋人は渋い顔で自分が取り上げた携帯を見つめている。
さっきのどさくさでいつの間にか呼び出し音は切れていた。

「…かけ直さないの?KCってあったよ」

いいの?と遊戯が小首を傾げて問うのに恋人は

「今日は遊戯さんのところに行くから絶対に電話には出ないって前もって言ってありますから大丈夫です」

などと全然大丈夫じゃない返事を返す。

「駄目だろ!?それでも電話があったって事はそうとうな事があったんじゃないの!?十代君じゃないとできない事とかさ!」
「昔はそういう問題もありましたけど、今はほとんどないですよ。俺みたいな力を持った若い連中で俺みたいな事をする奴らも何人かいますし」
「そうなんだ?じゃあ十代君も後輩に負けないようにしないと」
「それでも俺が一番ですから」

遊戯の恋人、遊城十代は若い頃から喜怒哀楽の豊かな表情で愛嬌があると言われる容姿をしているが、壮年にさしかかった現在は落ち着きはじめ元々の整った顔がわかり安くなってきてはいるものの遊戯の前では相変わらず子供のような表情で今も後輩には負けて無いと得意げだ。
それに遊戯が笑いながらもじゃあ一番の人に頼らないといけない何かがあったのかもよ?と暗にかけ直せと促す。
電話は本当に無粋だと思うが、困っている人がいるのかもしれないと思えば放って置くのも落ち着かない。
十代は促されて渋々と廊下に出ていった。彼はいつも仕事の内容を遊戯に知られたがらない。
彼は本来どんな世界にいるのだろうと思いを馳せてみようとしたこともあるのだがどうにもハリウッドのアクションやヒーロー映画の世界みたいな場所で主人公のような恋人の姿しか思い浮かばず、それはそれで遊戯は彼をヒーローだと思っているので似合うとは思うがいくらなんでもお気楽すぎるだろうと自分に呆れて笑ってしまう。
しかもそのヒーローの想い人が老いた自分であるだけに。だが、だからといって金髪グラマラスな美女に自分のポジションを譲るつもりは全くなく、奪うつもりの輩にだって負けるつもりはないけれど。

ガチャリとドアが再び開く音がして目を向けると十代がどんよりした姿で戻ってきた。

「…お仕事?」
「ハイ」
「…」
「さっき言った俺みたいな奴っていう後輩の一人が事件を失敗しただけならともかく益々難しくしたとかで…」
「…その後輩君は無事なの?」
「その後輩君からのSOSコールです」
「…」
「…」
「…ヒーローも大変だね」

やめちゃう?
それにうんと答えるような人間と恋人になったつもりは無いけれど、遊戯は笑って聞いてみる。

「まさか!」

十代はやけくそみたいに…実際に半ばやけくそ交じりに返事をするとソファに座る遊戯に思い切り抱き着いた。
いい歳になっても十代は力加減がヘタで今もとても苦しくて痛い。
けれど、きっと呼び出された彼はそのままここへは戻ってはこないのだろう。また。世界中を飛び回って救いを叫ぶ人の、精霊のところに行くのだ。
そう思うと彼の気の済むまで腕の中にいたいと思う。抱きつぶされてもいつまでも。

「ヒーローにも定年があったらいいのにねえ」
「ヒーローの定年ていつからですかね」
「…それでもまだあと10年は猶予ありそうかな」
「俺はいつまでもヒーローでいたいんですけど」
「ボクトヒーロードッチガイイノ」
「残念ながら俺が選ぶんじゃなくて遊戯さんとヒーローが俺を放してくれないんですよねー」
「うわなにそれ」

あんまりな十代の言い分に遊戯が弾けたように笑い、自分で言っておいて十代も照れくさそうにつられて笑う。


いってらっしゃい

そう言って微笑む遊戯にキスをして十代は部屋を出ていった。


























  嘘が上手くなったもんだよね

ふと十代の後ろから声がした。ユベルだ。

  何の事だ

  君みたいな奴なんて、僕は君しか知らないよ

マンションを出た所で話しかけられる。十代が恋人と過ごす間は決して出てこようとはしない代わりに離れると途端に飛び出してくるのだ。
最中に来られたら流石に困るが遊戯もきちんと対面した事のない十代の魂の半身に常に会いたがっているので何を遠慮しているのか知らないが出て来いよと言ってみた事もあるが遊戯の身の内にある光がどうしても合わないらしい。
それは大徳寺も同じようでいつからか猫のファラオをペットホテルに預けるように習慣づいてしまった。

  屁理屈かよ。俺そっくりそのままの奴はいなくても確かにいるだろ、後輩は

  精霊と人間の橋渡しができるなんて真似、君しかいないだろ。他のは皆ただのなんでも屋じゃないか

KCに向かう前にとまずはファラオたちを迎えにペットホテルへと足を向ける。

  それに本当に後輩なんていないだろ。彼らは君を腕の立つ生意気な年下だと思ってるんだから

そう言われて十代は鼻で笑う。
その姿は未だアカデミアを卒業したころの容姿のままだ。

マンションで、遊戯と過ごしていた壮年の姿はどこにもない。

  嘘が上手くなったもんだよね

もう一度ユベルが言った。
  
  キング・オブ・デュエリストなら君がどんな人間だって構わず愛してくれるんじゃないかい?

  そりゃそうだろ、遊戯さんなら。問題はそこじゃない

わかってて言ってくるユベルに十代は面倒くさそうに答える。

  俺が、遊戯さんの前では人間らしくいたいだけだ

まっすぐ前を向いて歩く青年は一度もマンションを振り向く事無く歩を進めた。

君が君でいることこそが君らしい、人間らしい姿だって彼なら言うと思うけどね。ユベルはそこまでは言わずにただ思うに止めて前を見る十代の代わりに後ろを振り向き、マンションを見上げた。



















































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